発電や小売に対してばかり注目されている電力自由化ですが、実は発送電部門についても制度改革が進行中です。
これまでの日本の電気事業は、各地域につき1つの電力会社が発電・送配電・小売を実施、地域独占という形になっていました。全国各地に電気をあまねく使用できる環境作りには寄与しましたが、経営の効率化が果たせず、低料金にしにくい側面があったことも事実です。
安定した電力供給を行ないながら、低価格の電気供給を行ない、消費者の事業者選択や企業の事業振興・拡大を目的にした電力自由化はどのように進んでいるのでしょうか。
売電部門だけで実は電力自由化はまだ未完成
1995年以降に何度か行なわれた制度改革を経て、発電部門は自由に参加できることになりました。また小売部門においても段階的に自由化を行い2016年4月、全面的に自由化となっています。
しかしこれだけでは電力自由化は果たせたとは言えません。電気を各消費者に届ける送配電部門が、従来の事業者と新規参入事業者を平等に扱うシステムにならないと健全な競争原理が働かず、いつまでも実行はできません。
これが俗に言う2020年問題で、自家発電した電気を自分で消費するものでない限りは、電柱・電線など送配電網を利用する必要があります。従って送配電部門の改革がされないうちは、電力自由化できたとは言えず、同時にこの部門の改革は、発電・小売の改革を進める上でも重要なものとなると言えるのです。2020年問題を解決することこそ電力自由化が果たせたと言え、いつまでと問われれば2020年までに制度が変わる必要があるのです。
送配電部門の分社化、どうやって分離するの?
発送電の分社化は推し進めないとならない重要な事項ですが、電気の需要と供給のバランスをとる管理や電柱・電線などの送配電網の設置・メンテナンスなどは、電力会社など一社が一元的に行った方が効率的です。
また一元的な管理の方が二重投資を抑止できることのメリットもあります。その背景を考えると送電部門に関しては、発電・小売部門のような自由化で新規参入を進める方策ではなく、1つの事業者が地域を一括管理する形態を残しつつ、あらゆる事業者が送電網を平等に利用できるような分社化が電力自由化には理想的です。
これは発送電分離と呼ばれ4つの方策が考えられ、送電部門の会計を他部門から分ける会計分離、送電全体を別会社化する法的分離、別社化し、発電と小売の部門の資本関係も解消する所有権分離、発送電設備は電力会社に残し、送電線の運用や指令機能を別の組織に分ける系統運用機能の分離があり、これら発送電分離はいつまでに行うかは2020年問題が解決するまでとなり、急がれるものです。この発送電分離の実行は政府の悲願でもあります。
送電の地域独占は結局変わらず
日本国内では2003年の制度改革によって会計分離が試行され、目的外の情報利用や恣意的な取扱いの禁止がなされています。また発送電業務の支援する機関も設置され、発送電部門の平等性を確保してきました。しかしこの方法だけでは中立性が不十分と言われ、いつからか検討した結果、2013年、発送電事部門は別会社にすることが定められた経緯があります。
さらに2015年6月には改正電気事業法によって、発送電部門は法的分離を行なうことが決められました。
これはいつからかと言われれば2020年から実施される予定です。このままだと資本関係持つ発電・小売事業者が、発送電事業者に対して影響力を増やし、関係グループを優遇する可能性があります。
そして同グループ内の取締役や社員が兼職した場合、発電・小売事業者の有利な運用を行うことも予想され、地域独占状況は変わらない可能性が懸念されます。こうしたことを踏まえ、現在検討を進めているのが現状です。
停電や離島、山間部は大丈夫?
従来、災害等で起きた大規模停電時、電気事業者の小売部門のアナウンスがあり、送配電部門と連携して停電箇所・復旧見込みなどの情報を共有させていました。電力自由化の改革以降も損なうことなく利便性が保たれることが理想です。
消費者の利便性を第一になるような制度の検討が進められています。また離島や山間部などでは非常時も含め発電・送配電・小売の3部門が一体化した業務を行ってきました。
電力自由化にあたってはこうした効率性も十分考慮した制度の構築に取組んでいます。なお、発電・小売事業を行うことが禁じられる法的分離後も、発電事業を行うことは例外的に認められることになります。先述した効率化が失われ、いつからか消費者の利便性が損なわれる可能性が高いためです。