新電力会社参入で電気料金はどれだけ割引できるか

新電力会社の参入によって競争が生まれ、電気料金が安くできるケースが増えています。大幅に割引できるわけではありませんが、独自の付帯サービスも人気を集めており、各社間の条件の比較検討が選択の鍵です。


新電力会社参入で電気料金はどれだけ割引できるか
無限の可能性秘めた電力市場
電気料金が安くなる仕組み
託送料金による割引の限界を付帯サービスで超える
各種サービスとの比較検討が選択の鍵


★無限の可能性秘めた電力市場

 1999年以降段階的に規制が緩められてきた電力市場も、2016年4月にはいよいよ最終段階に入りました。全国の一般家庭も新電力の恩恵を受けられるようになったのです。それぞれの地域に数多くの企業が家庭向け電力市場に新規参入しています。それらの新電力会社を選ぶことで電気料金が必ず安くなるというわけではなく、それぞれの家庭ごとに条件が異なります。電気の使用量によっても、安くなるプランと逆に高くなるプランがあるのです。そのため一概には言えませんが、従来は独占状態にあった市場の中で他に選択肢が与えられていなかったところへ、新たな競争が生まれたのは事実です。過去の経緯を振り返ると、1999年には2000kW以上の特別高圧と呼ばれる大口顧客への電力自由化が実現しました。老舗の新電力会社もこの時期に創業しています。2003年には50kW以上の高圧と呼ばれる顧客に自由化の範囲が及びます。一般家庭から離れたところでは、すでに電力市場での競争原理が働いていたのです。今回は最後に残された低圧市場が解放されました。契約者数が非常に多いだけに、新電力会社にとっても無限の可能性を秘めた魅力的な市場と言えます。


★電気料金が安くなる仕組み

 2016年4月のスタート時点で、すでに数多くの企業がこの巨大市場に名乗りを上げています。従来の大手電力会社の従量電灯プランなどと比べ、電気料金が何%割引されるという料金体系を打ち出しているところが多くなっています。このように電気料を安くできる理由は。当然のことながら競争原理が働いた結果でもあります。地域の大手電力会社がこれまで不当な利益を得ていたと言うわけではありませんが、競争が生まれると価格が安くなるのは自然な作用と言えます。安くなると言ってもその割引率を見ると、年間で10%程度安くなるだけでも現状ではかなりお得な料金体系と言えます。電気料金は発電コストから送電に関わる費用の他、さまざまな維持管理費等が加算されて決められます。公共性の高い分野ですので、料金に占める企業の利益率はそれほど高くありません。競争原理が働いたからと言っても、例えば料金を半額にするというように極端な割引は事実上不可能なのです。


★託送料金による割引の限界を付帯サービスで超える

 電気料金がある一定水準よりも安くできない理由としては、託送料金の存在が挙げられます。どの新電力会社も自前の送電網を持っているわけではありませんから、顧客の自宅まで電気を送るためには既存の送電施設を借りるしかないのです。自前の発電設備を持っている新電力会社でも、その使用料の託送料金がネックとなって料金を大幅に割引できないという事情があります。家庭向け電力市場の自由化スタートと同時に新電力会社への契約に切り替えた人の割合は、全国で50万世帯余りにとどまっています。電気料金が極端に安くなるのであれば、もっと多くの人が切り替えていたものと推測されます。しかしながらその点も、異業種からの参入組なら独自の付帯サービスによって乗り越えることが可能になります。石油系の新電力ならガソリン料金が安くなるサービスを、ガス会社系列であればガス料金と合わせた割引が可能です。その他にも携帯電話料金が安くなる例もあれば、ケーブルテレビ料金や旅行代金が安くなる例もあります。そうした情報を先取りしている人ほど、上手に家計をやりくりできるようになるのです。


★各種サービスとの比較検討が選択の鍵

 現状ではすべての人がそうした情報を把握することは困難です。日頃からインターネットなどを通じての情報摂取に努めてる人は、新電力会社の料金体系や付帯サービスについて短時間で調べる能力も持っています。それぞれの居住地域ごとに契約が可能な電力会社を比較するサービスもあります。スマートフォンの普及でインターネットを利用する人の割合も急速に高まってきてはいます。それでも高齢世帯を中心として、そうした最新情報をうまく利用できない人も全国には少なくありません。家庭向け電力市場の自由化はまだ始まったばかりなのですから、今後は電力会社間の比較サービスもさらに拡大していく余地があるものと予測されます。現状では託送料金がネックとなって料金を大幅に安くすることができない事情がありますが、2020年には発送電分離による送電自由化も予定されています。電力会社の対応によってはさらなる競争激化も予想されるのです。消費者としてはいつでも契約先を変えられるように、日頃から最新情報には目を光らせている必要があると言えます。